ゼネコンへの転職はやめとけと言われる理由3つを10年業界で働いた筆者が解説!

2023年5月22日

建設業界への転職に興味があるが、激務だし精神的にキツすぎる仕事という噂があるので応募をためらってしまう。

 

けれど、業界の中で最上位であるゼネコンであればサブコンや設備会社とは違ってそこそこホワイトなのではないか。

 

こんなことを考えている人はそれなりに多いのではないでしょうか。

 

結論から言いますと、ゼネコンだからといってホワイトな職場環境にありつけるわけではありません。

 

建設業界で働く以上、激務で精神的にきついのは宿命であり逃れられないと考えたほうが良いでしょう。

 

本記事を書いている私は、過去建設業界で約10年間働いてきました。

 

私自身営業技術・施工管理などの職種を経て、現場で働いた経験もあります。

 

そして、スーパーゼネコンで働く知人の話を聞いた結果などを踏まえて私の意見を言いますとゼネコンにホワイトな環境を求めるのは辞めたほうがよいです。

 

ということで今回は、建設業界において最上位に位置するゼネコンの実態などを解説していきます。

 

こんな方におすすめ

  • 1.ゼネコンはやめとけと言われる理由3点
  • 2.ゼネコンの残業時間や職場環境
  • 3.ゼネコンの年収
  • 4.ゼネコンの仕事に向いている人の特徴

 

1.ゼネコンはやめとけと言われる理由3点

 

理由①.発注者との調整がきつい

外の業界から見ると、上流に位置するゼネコンに就職や転職しさえすれば、下請けに仕事を振って自分は楽ができると思ったりする人も多いでしょう。

 

ですが、結論から言いますともちろんそんなことはありません。

 

ゼネコンであってもお客様である発注者がいますので、建築物を施工するにあたって建物の要件やスペックを発注者と調整する必要があります。

 

ゼネコン勤務している知人いわく、業界全体として知識や経験に富んでいた50代以上の方がどんどん定年などで退職して人手不足になった結果、発注者全体の傾向として「建築の専門知識レベル」が下がっているそうです

 

その結果、これまではお客様も詳しい人が多かったためスムーズだった打ち合わせの効率が落ちており、中には発注者が決めるべき内容を「ゼネコンで決めてくれ」と言う無責任な発注者も増えてきています。

 

ですが、もちろん建物の仕様を決めるのは発注者です。

 

そのため、なんとか発注者に内容を理解してもらい、決断を促すための資料を作成したりと、昔と比べて無駄な作業が増えている実態があります

 

なお、建設業界全体は現在進行系で人手不足に悩まされています。

 

その詳細は【パワハラ】建設業の人手不足は当たり前。理由5つを10年業界にいた私が解説!という記事で解説しておりますので興味がありましたら是非ともご覧ください。

 

理由②.ストレスがすさまじい

結論、ゼネコンの仕事は極めてストレスが大きい仕事です。

 

中でも、工事現場の最前線で働く施工管理の方はストレスとプレッシャーがすさまじいでしょう。そして、その理由はこんな感じ。

 <ゼネコンの仕事のストレス要因>

  • 工期遅れがないか不安
  • 朝は遅くても7時には現場入り
  • 夏は暑いし冬は寒い。ヘルメットは蒸れて汗臭さMAXになる
  • 残業100時間超えなんて当たり前。次の工程に向けた準備に追われる毎日。竣工間際は家に帰れないこともしばしば
  • 週休二日なんて無理ゲー。休みは日曜のみ。竣工直前は日曜すら仕事になることもよくあること
  • たまにの休みも疲れ果てて寝て終わる。休みの日も携帯電話が鳴り止まず、実質休みを取るのは難しい
  • トンネルなど、田舎の現場は宿舎で同僚と共同生活。こうなると息抜きもできない
  • 若手の頃は特に職人から舐められる。所長から怒鳴られるなんてことは当たり前。パワハラがまかり通る昭和な業界
  • 会社によっては昼間と夜間工事の現場を掛け持ちすることも。こうなると昼夜逆転生活になり、睡眠時間なんて確保できない
  • 所長よりも朝早く来て遅く帰るなど、暗黙の古い風習が存在する
  • 癖の強い職人の仲裁などが毎日のようにあり、精神的に辛い
  • 残業代は多いがサービス残業はそれ以上。サービス残業を入れた時給換算するとバイト並であることもしばしば
  • 自分のミスが工事全体の工程に影響する可能性もある。責任は極めて重く、プレッシャーがきつい
  • 現場が僻地で移動時間が2時間かかることも。この移動時間は労働とは認められない など

 

現場では毎年複数の死亡事故が発生しているように、現場仕事は人の命に関わる仕事です

 

皆さんも日々生活していて、子供が車道に出たりすると大きな声で「危ない!!」と言いますよね。

 

建設現場の仕事は、危険な作業をしようものならその10倍はキツい口調で

 

おい!!!何やってんだ!!!

 

と怒鳴り散らかされます。

 

命がかかっているので言葉が荒くなるのもわかるのですが、実際怒鳴られると結構精神的にキツいのも事実です。

 

そして、現場で事故が発生した場合の監督責任はゼネコンにあります。

 

そのため、労災事故が発生すると発注者に様々な状況報告や再発防止策の報告をしなければなりません

 

その間は現場作業が発注者の指示でストップになったりするわけですが、現場が止まっても工期が遅れることはありません。

 

この点は本当に業界の闇だと思っていまして、発注者側も

 

大変だろうけど、最後は追い込みかけてなんとか間に合わせてくださいね

 

といった感じで、現場作業者全員が発狂しそうになるほどの残業を行う前提で工程が組まれているのが実態です。

 

なお、こういった建設業界の闇の詳細については【施工管理】建設業界はおかしい!業界で10年勤めた筆者が語る業界の闇【恫喝】という記事で詳しく解説しております。こちらも是非ご覧ください。

 

理由③.業界全体の人手不足

結論、建設業界は若い人が少なくて55歳以上の人が多い業界であり、人手不足の深刻化が課題となっています。 

 

<引用:「2020建設業ハンドブック」日本建設連合会発行>

 

少し前のデータにはなりますが、2019年時点で全産業と比較すると20代の労働人口が5%少なく55歳以上の労働人口は5%多いです。

 

実際、コロナもあり一人親方を中心に業界を引退した55歳以上の建設従事者は多く、その穴を20代~30代が埋める構図となっています。

 

そのため、若手~中堅の方はますます仕事が忙しくなる一方で、2024年からは年間の長時間労働にメスが入ります

 

他の産業では2019年に労働基準法が改正され、多くの業種で働き方改革に基づき時間外労働の制限が施行されました。

 

ただ、建設業界は忙しすぎるので、施行時期は他業界から遅れて2024年になっているのです。

 

大きな点は、時間外労働の上限時間が720時間に明確化されたこと。

 

国土交通省が2019年に発行した「建設業の働き方改革について」では、残業規制の概要について以下のように記載されています。

【36協定の限度】

・原則、月45時間 かつ 年360時間

・特別条項でも上回ることの出来ない時間外労働時間を設定

年720時間(月平均60時間)

② 年720時間の範囲内で、一時的に事務量が増加する場合にも 上回ることの出来ない上限を設定

a.2~6ヶ月の平均でいずれも80時間以内(休日出勤を含む)

b.単月100時間未満(休日労働を含む)

c.原則(月45時間)を上回る月は年6回を上限

(2)建設業の取り扱い ・施行後5年間 現行制度を適用

 

2024年までは「臨時的で特別な事情がある場合、延長に上限なし(年6か月まで)(特別条項)」と会社によって上限時間を委ねられていたものの、2024年からはどんな会社も共通で年間720時間までしか残業がつかなくなってしまうのです

 

普通の業界であれば720時間も残業するなんて珍しいでしょうけど、建設業界では720時間以上残業する人は珍しくありません。

 

むしろ、メンテナンスや施工管理をしている人は、年間残業が720時間を超えている人がほとんどでしょう。

 

もちろん、この規制によって仕事量が減るのであれば「今後は建設業界も徐々にホワイトになっていくかもしれない」と言えるのでしょうが、残念なことに残業規制が入ったからといって、仕事が減るワケではありません

 

実際、ゼネコンで働く知人は「仕事量の減少は感じない。特に若手は休日も働き疲弊している」と言っていました。

 

このように、法律で労働時間が制限されるものの、仕事の絶対量が減少しない結果として目に見えるのが「サービス残業の増加」です。

 

元業界人として感じるのは、施工管理として働くほとんどの人はこれまでもサービス残業をしてきたということ。

 

100時間を超える残業をすべて付けられる会社は稀でしょうけど、繁忙期は150時間や200時間を超える残業も珍しくはありませんので、サービス残業率は非常に高い職種だったと思います。

 

そうした現状から2024年以降はさらにサービス残業が増える可能性があり、今後施工管理という職種はますます避けられる職種になるかもしれません。

 

なお、施工管理の仕事内容やそのキツさについては「施工管理はやめとけ」の理由6つ。建設業界で10年働いた私がヤバい実態を解説という記事で解説しております。こちらも是非ご覧ください。

 

2.ゼネコンの残業時間や職場環境

 

ゼネコンの辛い点はわかったけど、実際残業時間ってどの程度なのだろうかと疑問をお持ちの方は多いでしょう。

 

そんな方向けに現役社員や元社員が口コミできる転職会議でゼネコン各社の残業時間と従業員満足度(5点満点)を調べてみた結果は以下の通りです。

 <ゼネコン企業の平均残業時間と満足度(5点満点):2023/5/20 転職会議より>

  • 鹿島建設:55.4時間、3.60
  • 大林組:55.6時間、3.58
  • 清水建設:46.3時間、3.40
  • 大成建設:61.1時間、3.06
  • 竹中工務店:47.5時間、3.43
  • 長谷工コーポレーション:47.5時間、3.25
  • 東急建設:55.5時間、2.99
  • 戸田建設:42.8時間、3.22
  • 熊谷組:40.0時間、2.95
  • 三井住友建設:38.4時間、3.11
  • 安藤ハザマ:41.9時間、3.19
  • 五洋建設:54.9時間、3.43

 

平均残業時間で40時間を下回った会社は1社のみであり、40〜60時間が会社平均である場合がほとんどでした。

 

特筆すべきは、スーパーゼネコンになるほど残業時間が多くなる傾向にあることです。

 

やはり、スーパーゼネコンは仕事の受注量も多いですし、複数社JVで工事をこなすような難易度の高い仕事も多いであろう結果業務量が多くなる傾向にあるのだと思います。

 

私自身はゼネコン下請けのサブコンから更に下請けの会社で働いてきまして、竣工間際は徹夜で家にも帰れない同僚を多く見てきました。

 

ただ、その実態はサブコンでもゼネコンでも同じように見えましたし、こうした数値を鑑みてもその直感はきっと合っているのだと思いますね。

 

ただ、そうした厳しい職種でありながらも、従業員の満足度は5点満点で3点以上を確保している会社がほとんどです

 

建設業界自体には私自身改善の余地は多分にあると感じていますが、建設業界で生きていくと心に決めた人にとってはゼネコンは上流であり待遇も良いのでおススメと言えるでしょう。

 

なお、業界から異業種に転職した私が感じる建設業界のおかしな点については【施工管理】建設業界はおかしい!業界で10年勤めた筆者が語る業界の闇【恫喝】という記事で解説しております。こちらも是非ご覧ください。

 

3.ゼネコンの年収

 

結論、各社の2022年度有価証券報告書によるとこんな感じ。

 <ゼネコン企業の平均年収と平均年齢>

  • 鹿島建設:1,127万円、44.1歳
  • 大林組:1,024万円、42.6歳
  • 清水建設:977万円、43.1歳
  • 大成建設:963万円、42.9歳
  • 竹中工務店:非公開(非上場のため)
  • 長谷工コーポレーション:910万円、41.2歳
  • 東急建設:732万円、45.1歳
  • 戸田建設:876万円、44.6歳
  • 熊谷組:840万円、44.1歳
  • 三井住友建設:862万円、46.0歳
  • 安藤ハザマ:861万円、45.7歳
  • 五洋建設:860万円、41.9歳

 

こうした数字からも読み取れるように、結論から言うとゼネコンの年収は高いです。

 

ただし、その金額が割に合うかどうかは別の話です。

 

他業種の仕事内容と比べて、体力的にも精神的にもキツいのがゼネコンの仕事です。

 

そして、多少のサービス残業も含まれているであろうことを考慮すると、コストパフォーマンスが良いかは判断が分かれるところでしょう。

 

また、平均年齢が40代の前半~中盤になっていることも平均年収を押し上げる要因と言えます。

 

これについては、上述の通り若い人が定着せず、辞めようにも辞めることのできない50代が多い業界構造の結果と言えるでしょう。

 

4.ゼネコンの仕事に向いている人の特徴

 

ゼネコンに向いている人その①.建築を心から楽しいと感じる人

当たり前といえば当たり前の話ですけど、建築そのものが好きかどうかはかなり重要です。

 

上述の通り、ゼネコンの仕事は他業種に比べれば圧倒的にハードです。

 

残業も多いですし、精神的に追い込まれることもあるでしょう。

 

ただ、それでも建築が面白い」という気持ちがあれば全てを乗り越えられると思います。

 

例えば、役者や売れっ子芸能人は睡眠時間が極限に削られたりと、労基無視のブラックな環境だとも言えますが、こうした人の多くは仕事が好きだから苦にならないと雑誌インタビューで答えたりします

 

このように、「好き」という感情があればブラックなゼネコンの仕事もホワイトだと感じるでしょう。

 

そんな人にとっては、工法や新しい技術が毎年のように生まれていく建築の最前線が学べるゼネコンの仕事は天職と言えるのではないでしょうか。

 

ゼネコンに向いている人その②.体力がある人

結論、ゼネコンの仕事は激務なので体力自慢の人は向いています。

 

実際、スーパーゼネコンだろうが「施工管理」の人材はいつでも不足していると聞きます。

 

そして、この職種は圧倒的に「激務」となりますので、ベースとなる体力を備えているというのはこの業界で長く働くにあたっての確固たる強みと言えるでしょう。

 

仕事において体力は重要ですけど、建設業界で働くとなると周囲が思っている以上に体力が大事になってきたりします。

 

そして、仕事における体力の重要性については【目指せ一流】ビジネスパーソンに必要なのは心技体よりも体技心【身体が資本】という記事で解説しておりますので、こちらも興味があれば是非ともご覧ください。

 

ゼネコンに向いている人その③.形に残る仕事に誇りを感じる人

ゼネコンという仕事で最も達成感が味わえる瞬間は、建物が竣工すると形に残るという点でしょう。

 

街を歩けば自分が携わった建物が目に映る、車を走らせていたら自分が手掛けたトンネルや橋などの建築物が目に映る。

 

家族が居ればそのことを自慢できて誇りを持てるでしょう。

 

それに対して、私のような建設業界不適合者の場合、竣工後の建物を見ると当時の辛い記憶がフラッシュバックします。

 

結果、自分が関わった現場なんて見たくもないという気持ちになるものです。

 

これは実際に現場仕事を経験してみないとわからないことではあるのですが、自分の手掛けた仕事が後々形として残っていくことに誇りを感じる人も多いでしょう

 

そうした性格をお持ちの人はゼネコンの仕事に向いていると思いますね。

 

おわりに。

ということで、ゼネコンの仕事はやめておいたほうが良いのか?という点に関するまとめ記事でした。

 

どんな仕事でもそうですが、特にゼネコンの仕事は「好きな嫌いか」が長く働けるかを大きく左右すると思っています。

 

私自身は建設業界から異業種に転職をして良かったと思っていますが、それは私自身が業界の文化に適合しなかったからです。

 

客観的に見ても建設業界の仕事は理不尽でハードなのは事実ですが、それでも仕事が好きであれば高年収で好きなことに長く関われる良い仕事とも言えます

 

ですので、ゼネコンの仕事に興味のある方は自分の好きな仕事は何なのかを今一度考えてみると良いと思います。

 

今回は以上です。

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